1 - ネームスペースのデフォルトのメモリー要求と制限を設定する

ネームスペースのデフォルトのメモリーリソース制限を定義して、そのネームスペース内のすべての新しいPodにメモリーリソース制限が設定されるようにします。

このページでは、ネームスペースのデフォルトのメモリー要求と制限を設定する方法を説明します。

Kubernetesクラスターはネームスペースに分割することができます。デフォルトのメモリー制限を持つネームスペースがあり、独自のメモリー制限を指定しないコンテナでPodを作成しようとすると、コントロールプレーンはそのコンテナにデフォルトのメモリー制限を割り当てます。

Kubernetesは、このトピックで後ほど説明する特定の条件下で、デフォルトのメモリー要求を割り当てます。

始める前に

Kubernetesクラスターが必要、かつそのクラスターと通信するためにkubectlコマンドラインツールが設定されている必要があります。 このチュートリアルは、コントロールプレーンのホストとして動作していない少なくとも2つのノードを持つクラスターで実行することをおすすめします。 まだクラスターがない場合、minikubeを使って作成するか、 以下のいずれかのKubernetesプレイグラウンドも使用できます:

クラスターにネームスペースを作成するには、アクセス権が必要です。

クラスターの各ノードには、最低でも2GiBのメモリーが必要です。

ネームスペースの作成

この演習で作成したリソースがクラスターの他の部分から分離されるように、ネームスペースを作成します。

kubectl create namespace default-mem-example

LimitRangeとPodの作成

以下は、LimitRangeのマニフェストの例です。このマニフェストでは、デフォルトのメモリー要求とデフォルトのメモリー制限を指定しています。

apiVersion: v1
kind: LimitRange
metadata:
  name: mem-limit-range
spec:
  limits:
  - default:
      memory: 512Mi
    defaultRequest:
      memory: 256Mi
    type: Container

default-mem-exampleネームスペースにLimitRangeを作成します:

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-defaults.yaml --namespace=default-mem-example

default-mem-exampleネームスペースでPodを作成し、そのPod内のコンテナがメモリー要求とメモリー制限の値を独自に指定しない場合、コントロールプレーンはデフォルト値のメモリー要求256MiBとメモリー制限512MiBを適用します。

以下は、コンテナを1つ持つPodのマニフェストの例です。コンテナは、メモリー要求とメモリー制限を指定していません。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: default-mem-demo
spec:
  containers:
  - name: default-mem-demo-ctr
    image: nginx

Podを作成します:

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-defaults-pod.yaml --namespace=default-mem-example

Podの詳細情報を表示します:

kubectl get pod default-mem-demo --output=yaml --namespace=default-mem-example

この出力は、Podのコンテナのメモリー要求が256MiBで、メモリー制限が512MiBであることを示しています。 これらはLimitRangeで指定されたデフォルト値です。

containers:
- image: nginx
  imagePullPolicy: Always
  name: default-mem-demo-ctr
  resources:
    limits:
      memory: 512Mi
    requests:
      memory: 256Mi

Podを削除します:

kubectl delete pod default-mem-demo --namespace=default-mem-example

コンテナの制限を指定し、要求を指定しない場合

以下は1つのコンテナを持つPodのマニフェストです。コンテナはメモリー制限を指定しますが、メモリー要求は指定しません。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: default-mem-demo-2
spec:
  containers:
  - name: default-mem-demo-2-ctr
    image: nginx
    resources:
      limits:
        memory: "1Gi"

Podを作成します:

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-defaults-pod-2.yaml --namespace=default-mem-example

Podの詳細情報を表示します:

kubectl get pod default-mem-demo-2 --output=yaml --namespace=default-mem-example

この出力は、コンテナのメモリー要求がそのメモリー制限に一致するように設定されていることを示しています。 コンテナにはデフォルトのメモリー要求値である256Miが割り当てられていないことに注意してください。

resources:
  limits:
    memory: 1Gi
  requests:
    memory: 1Gi

コンテナの要求を指定し、制限を指定しない場合

1つのコンテナを持つPodのマニフェストです。コンテナはメモリー要求を指定しますが、メモリー制限は指定しません。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: default-mem-demo-3
spec:
  containers:
  - name: default-mem-demo-3-ctr
    image: nginx
    resources:
      requests:
        memory: "128Mi"

Podを作成します:

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-defaults-pod-3.yaml --namespace=default-mem-example

Podの詳細情報を表示します:

kubectl get pod default-mem-demo-3 --output=yaml --namespace=default-mem-example

この出力は、コンテナのメモリー要求が、コンテナのマニフェストで指定された値に設定されていることを示しています。 コンテナは512MiB以下のメモリーを使用するように制限されていて、これはネームスペースのデフォルトのメモリー制限と一致します。

resources:
  limits:
    memory: 512Mi
  requests:
    memory: 128Mi

デフォルトのメモリー制限と要求の動機

ネームスペースにメモリーリソースクォータが設定されている場合、メモリー制限のデフォルト値を設定しておくと便利です。

以下はリソースクォータがネームスペースに課す制限のうちの2つです。

  • ネームスペースで実行されるすべてのPodについて、Podとその各コンテナにメモリー制限を設ける必要があります(Pod内のすべてのコンテナに対してメモリー制限を指定すると、Kubernetesはそのコンテナの制限を合計することでPodレベルのメモリー制限を推測することができます)。
  • メモリー制限は、当該Podがスケジュールされているノードのリソース予約を適用します。ネームスペース内のすべてのPodに対して予約されるメモリーの総量は、指定された制限を超えてはなりません。
  • また、ネームスペース内のすべてのPodが実際に使用するメモリーの総量も、指定された制限を超えてはなりません。

LimitRangeの追加時:

コンテナを含む、そのネームスペース内のいずれかのPodが独自のメモリー制限を指定していない場合、コントロールプレーンはそのコンテナにデフォルトのメモリー制限を適用し、メモリーのResourceQuotaによって制限されているネームスペース内でPodを実行できるようにします。

クリーンアップ

ネームスペースを削除します:

kubectl delete namespace default-mem-example

次の項目

クラスター管理者向け

アプリケーション開発者向け

2 - Namespaceに対する最小および最大メモリー制約の構成

このページでは、Namespaceで実行されるコンテナが使用するメモリーの最小値と最大値を設定する方法を説明します。 LimitRange で最小値と最大値のメモリー値を指定します。 PodがLimitRangeによって課される制約を満たさない場合、そのNamespaceではPodを作成できません。

始める前に

Kubernetesクラスターが必要、かつそのクラスターと通信するためにkubectlコマンドラインツールが設定されている必要があります。 このチュートリアルは、コントロールプレーンのホストとして動作していない少なくとも2つのノードを持つクラスターで実行することをおすすめします。 まだクラスターがない場合、minikubeを使って作成するか、 以下のいずれかのKubernetesプレイグラウンドも使用できます:

バージョンを確認するには次のコマンドを実行してください: kubectl version.

クラスター内の各ノードには、少なくとも1GiBのメモリーが必要です。

Namespaceの作成

この演習で作成したリソースがクラスターの他の部分から分離されるように、Namespaceを作成します。

kubectl create namespace constraints-mem-example

LimitRangeとPodを作成

LimitRangeの設定ファイルです。

apiVersion: v1
kind: LimitRange
metadata:
  name: mem-min-max-demo-lr
spec:
  limits:
  - max:
      memory: 1Gi
    min:
      memory: 500Mi
    type: Container

LimitRangeを作成します。

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-constraints.yaml --namespace=constraints-mem-example

LimitRangeの詳細情報を表示します。

kubectl get limitrange mem-min-max-demo-lr --namespace=constraints-mem-example --output=yaml

出力されるのは、予想通りメモリー制約の最小値と最大値を示しています。 しかし、LimitRangeの設定ファイルでデフォルト値を指定していないにもかかわらず、 自動的に作成されていることに気づきます。

  limits:
  - default:
      memory: 1Gi
    defaultRequest:
      memory: 1Gi
    max:
      memory: 1Gi
    min:
      memory: 500Mi
    type: Container

constraints-mem-exampleNamespaceにコンテナが作成されるたびに、 Kubernetesは以下の手順を実行するようになっています。

  • コンテナが独自のメモリー要求と制限を指定しない場合は、デフォルトのメモリー要求と制限をコンテナに割り当てます。

  • コンテナに500MiB以上のメモリー要求があることを確認します。

  • コンテナのメモリー制限が1GiB以下であることを確認します。

以下は、1つのコンテナを持つPodの設定ファイルです。設定ファイルのコンテナ(containers)では、600MiBのメモリー要求と800MiBのメモリー制限が指定されています。これらはLimitRangeによって課される最小と最大のメモリー制約を満たしています。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: constraints-mem-demo
spec:
  containers:
  - name: constraints-mem-demo-ctr
    image: nginx
    resources:
      limits:
        memory: "800Mi"
      requests:
        memory: "600Mi"

Podの作成

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-constraints-pod.yaml --namespace=constraints-mem-example

Podのコンテナが実行されていることを確認します。

kubectl get pod constraints-mem-demo --namespace=constraints-mem-example

Podの詳細情報を見ます

kubectl get pod constraints-mem-demo --output=yaml --namespace=constraints-mem-example

出力は、コンテナが600MiBのメモリ要求と800MiBのメモリー制限になっていることを示しています。これらはLimitRangeによって課される制約を満たしています。

resources:
  limits:
     memory: 800Mi
  requests:
    memory: 600Mi

Podを消します。

kubectl delete pod constraints-mem-demo --namespace=constraints-mem-example

最大メモリ制約を超えるPodの作成の試み

これは、1つのコンテナを持つPodの設定ファイルです。コンテナは800MiBのメモリー要求と1.5GiBのメモリー制限を指定しています。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: constraints-mem-demo-2
spec:
  containers:
  - name: constraints-mem-demo-2-ctr
    image: nginx
    resources:
      limits:
        memory: "1.5Gi"
      requests:
        memory: "800Mi"

Podを作成してみます。

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-constraints-pod-2.yaml --namespace=constraints-mem-example

出力は、コンテナが大きすぎるメモリー制限を指定しているため、Podが作成されないことを示しています。

Error from server (Forbidden): error when creating "examples/admin/resource/memory-constraints-pod-2.yaml":
pods "constraints-mem-demo-2" is forbidden: maximum memory usage per Container is 1Gi, but limit is 1536Mi.

最低限のメモリ要求を満たさないPodの作成の試み

これは、1つのコンテナを持つPodの設定ファイルです。コンテナは100MiBのメモリー要求と800MiBのメモリー制限を指定しています。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: constraints-mem-demo-3
spec:
  containers:
  - name: constraints-mem-demo-3-ctr
    image: nginx
    resources:
      limits:
        memory: "800Mi"
      requests:
        memory: "100Mi"

Podを作成してみます。

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-constraints-pod-3.yaml --namespace=constraints-mem-example

出力は、コンテナが小さすぎるメモリー要求を指定しているため、Podが作成されないことを示しています。

Error from server (Forbidden): error when creating "examples/admin/resource/memory-constraints-pod-3.yaml":
pods "constraints-mem-demo-3" is forbidden: minimum memory usage per Container is 500Mi, but request is 100Mi.

メモリ要求や制限を指定しないPodの作成

これは、1つのコンテナを持つPodの設定ファイルです。コンテナはメモリー要求を指定しておらず、メモリー制限も指定していません。

apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
  name: constraints-mem-demo-4
spec:
  containers:
  - name: constraints-mem-demo-4-ctr
    image: nginx

Podを作成します。

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/admin/resource/memory-constraints-pod-4.yaml --namespace=constraints-mem-example

Podの詳細情報を見ます

kubectl get pod constraints-mem-demo-4 --namespace=constraints-mem-example --output=yaml

出力を見ると、Podのコンテナのメモリ要求は1GiB、メモリー制限は1GiBであることがわかります。 コンテナはどのようにしてこれらの値を取得したのでしょうか?

resources:
  limits:
    memory: 1Gi
  requests:
    memory: 1Gi

コンテナが独自のメモリー要求と制限を指定していなかったため、LimitRangeから与えられのです。 コンテナが独自のメモリー要求と制限を指定していなかったため、LimitRangeからデフォルトのメモリー要求と制限が与えられたのです。

この時点で、コンテナは起動しているかもしれませんし、起動していないかもしれません。このタスクの前提条件は、ノードが少なくとも1GiBのメモリーを持っていることであることを思い出してください。それぞれのノードが1GiBのメモリーしか持っていない場合、どのノードにも1GiBのメモリー要求に対応するのに十分な割り当て可能なメモリーがありません。たまたま2GiBのメモリーを持つノードを使用しているのであれば、おそらく1GiBのメモリーリクエストに対応するのに十分なスペースを持っていることになります。

Podを削除します。

kubectl delete pod constraints-mem-demo-4 --namespace=constraints-mem-example

最小および最大メモリー制約の強制

LimitRangeによってNamespaceに課される最大および最小のメモリー制約は、Podが作成または更新されたときにのみ適用されます。LimitRangeを変更しても、以前に作成されたPodには影響しません。

最小・最大メモリー制約の動機

クラスター管理者としては、Podが使用できるメモリー量に制限を課したいと思うかもしれません。

例:

  • クラスター内の各ノードは2GBのメモリーを持っています。クラスター内のどのノードもその要求をサポートできないため、2GB以上のメモリーを要求するPodは受け入れたくありません。

  • クラスターは運用部門と開発部門で共有されています。 本番用のワークロードでは最大8GBのメモリーを消費しますが、開発用のワークロードでは512MBに制限したいとします。本番用と開発用に別々のNamespaceを作成し、それぞれのNamespaceにメモリー制限を適用します。

クリーンアップ

Namespaceを削除します。

kubectl delete namespace constraints-mem-example

次の項目

クラスター管理者向け

アプリケーション開発者向け